2006年12月24日 (日)

聖夜に… ヒイラギモチ (柊黐)

ヒイラギモチ体調不良に明け暮れた12月。
あらためてカレンダーを見ると、今日は24日…

クリスマス・イブだ…

というわけで、クリスマスまでにはアップしようと思っていたヒイラギモチである。
…なんとか間に合って良かった…

ヒイラギモチ・・・(柊黐) モチノキ科 モチノキ属 Ilex cornuta 中国東北部、朝鮮半島に分布する常緑低木 別名:シナヒイラギ ヤバネヒイラギ 一般流通名:クリスマス・ホーリー

この写真は12月の初めに名古屋の鶴舞公園で撮影したもので、当然植栽されたものである。
傍らの札には「シナヒイラギ」と書かれていたが、標準和名はヒイラギモチなので、ここではこちらを採用することにした。

昔から不思議だったのだが、我が家にもヒイラギの木はあるけど、あのクリスマスちっくな赤い実はならない。
ヒイラギは雌雄異株だから、我が家のヒイラギは雄の木なのだ…と思っていたのだが、ヒイラギはたとえ実っても、その実は黒っぽいのである。
どう転んでも、あのデパートの包装紙のような、華やかなクリスマス・カラーにはならないのだ。

実は、ヒイラギモチはモチノキ科なので、モクセイ科のヒイラギとは別ものなのである…
ヒイラギモチの葉あら~、そうだったの~!知らなかったなぁ…

そう言えば、葉は互生だし、ヒイラギモチの葉の形はよく見ると矢羽根型である。
別名の「ヤハズヒイラギ」とは、なかなかうまいネーミングだ。

ちなみに、ヒイラギモチの園芸店での流通名は「クリスマス・ホーリー(ホリー)」だが、本来ヨーロッパでクリスマス・ホーリー(Christmas holy)と呼ばれるのは、同じくモチノキ科の「セイヨウヒイラギ」 Ilex aquifolium(地中海~西アジア原産) だ。
というわけで、ヒイラギモチの英名は、チャイニーズ・ホーリー(Chinese holy)である。

さて、ヨーロッパではセイヨウヒイラギを、魔よけのためにドアの外に吊すという。
もう一つちなみに、北アメリカでは北アメリカ原産の「アメリカヒイラギ」(モチノキ科 Ilex opaca )を用いるらしい。

日本では厄払いのためにイワシの頭を刺したヒイラギを玄関外に吊す風習があるが、一つうわてのナマぐさイワシがプラスされるとはいえ、「和の魔」「洋の魔」ともにトゲトゲが嫌いであるという、奇妙な一致が見える。

また、中国では爆竹の音で鬼を追い払うというが、ヒイラギも火にくべるとパンパンと爆ぜるところから、魔よけとして用いられるそうなので、まとめてみると、魔や鬼や邪の類は、トゲトゲ、くさくさ、パンパン!が嫌いということになるが、そんなものより、おどろおどろしい人間どもの方が、ずっと怖いに決まってるじゃないか。

ヒイラギモチの実なんのことはない。鬼は人間よりも遙かにデリケートなのである。

鮮やかな濃いグリーンの葉を背景に、たわわに実る真っ赤な実。
見ているだけでクリスマス気分にしてくれるヒイラギモチには、nancyの右顎に潜む魔も追い払ってくれそうな、生き生きとした力強さがあるようだった。

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2006年7月31日 (月)

オニユリの咲く頃 …その2

オニユリ 雨のしずくを光らせて、オニユリが咲く。

今年の7月は、相当不順な天候だったのにもかかわらず、近所のオニユリは例年に増して立派な花が咲いた。

オニユリは特に珍しい花ではないが、タカサゴユリのように、どこでもかしこでも咲いているというわけではない。

タカサゴユリは実生で増えるユリであり、薄く軽い種が風によって運ばれる風媒花であるから、それはもう行き先は風任せ、まさに「旅するユリ」と言った趣きを感じさせるユリである。
オニユリの茎反対にオニユリは、ニホンスイセンヒガンバナのように、そのほとんどが3倍体であることから、種を作ることができず、その結果限られた範囲内での群生にとどまるようだ。
※3倍体… 染色体のセット数が奇数なので正常な減数分裂が起こらないため、種を作ることができない。

種はできないが、その代わりにオニユリには珠芽(しゅが/むかご)ができる。
むかごと言えばヤマイモが思い浮かぶが、オニユリは葉の葉脇ごとについた珠芽が地面に落ちて繁殖するのである。

オニユリの珠芽つまり、オニユリの増え方は、「無性生殖」「栄養繁殖」「クローン増殖」ということになり、この土手に咲いているオニユリは、全て同じDNAを持つ、ということになるのだろう。

珠芽を付けるユリは、日本ではこのオニユリ1種だけなので、見た目そっくりで山間部に咲くコオニユリと見わけるための有効な特徴となる。

オニユリ 7月の始め、まだつぼみも小さく緑色の頃、オニユリの茎の上部に、白くふわふわした綿毛(クモ毛)を見つけた。
それこそ本当にクモの巣かと思ったが、これは最初のうちだけで、花が咲く頃になると見られなくなる。
また、上部の茎は緑色だが下の方は暗紫色で、これも特徴の一つだ。

さて、と名が付くがオニユリには毒はない。
オニユリの花毒どころか、その鱗茎(ユリ根)は豊富なでんぷん質を含み、充分食用になる。
いやいや、充分どころか、かつては飢饉のたびに人々の命を救ってきたのである。
今、こうして田畑の近くにオニユリの姿を見ることができるのは、救荒食品としてオニユリが植えられていた頃の名残なのだ。

おそらくは飢饉の為に育てるようにと、人々の間で珠芽(むかご)が手渡されたのではないだろうか。
風媒花ならぬ人媒花とでも呼ぼうか、オニユリが広く行き渡った背景には、過酷な環境を生き抜いてきた農民の知恵があったればこそ、なのである。

Oniyuri02 今はもう、饑餓のためにオニユリの根を食べることはなくなったが、オニユリは季節の移ろいを知らせる大切な風景の一部として存在している。

野の花と呼ぶにはいささか華やか過ぎるその花は、7月がくれた豪華なプレゼントなのだろう。

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2006年7月27日 (木)

オニユリの咲く頃 …その1

オニユリ 毎年7月の半ば頃になると、近くの土手にオニユリが咲く。

向こうに見えるは山、田んぼは一面緑に満ちて、空にはサギが飛ぶ。
オニユリの花の色が一段と映える。

オニユリ・・・(鬼百合) ユリ科 ユリ属 Lilium lancifolium 北海道、本州、四国、九州に分布する多年草 草丈1~2mに達する大型のユリ 花期7~8月

これが今年の一番花だったのだが、この後、あのうんざりするほどの長雨がやってきたのである。

オニユリのつぼみ果たしてつぼみたちはどうなったのだろうかと、雨がやむのを待ってはたびたび見に行った。

身にまとったしずくを光らせるオニユリのつぼみ。
普通の花なら、あれだけ長く雨に打たれたのだから、腐ってしまっても不思議ではないくらいである。

オニユリ しかしそこには、長雨などものともせずに咲くオニユリの姿があった。
日照不足など彼らには関係ないのか、あの鮮やかなオレンジ色の花弁をぐいと反り返らせ、雄しべを長く突き出し、アゲハチョウを呼ぶのである。
う~ん!さすがのオニユリ! 彼らはとんでもなく強い!のである。

ちなみに、オニユリの周りに見えている大きな葉っぱはクズ(葛)の葉。
はびこる強さでは右に出るものは居ないほどだが、そのクズを相手にまったく引けを取らないのがオニユリなのだ。
上からクズにすっぽり覆われてしまっても、しぶとくその下で咲き続ける。
また茎に絡まれても、平気ですっくと立ち上がる自力があるのだ。

オニユリの強さは、その花の色にも現れているような気がする。
6月に咲く花には、白い花が多い。
スイカズラの白、スズランの白、テイカカズラの白、エゴノキの白… 挙げればいくつも思い浮かぶ。
6月のむせかえるような草いきれの中、白い花たちはまるで一服の清涼剤のようだった。

ヒマワリとヤブカンゾウ しかし7月に入ると、今度はヒマワリや、ヤブカンゾウなど、黄色やオレンジの花が生き生きと咲き出す。
ぎらぎらと輝く太陽の光に対抗しようとしてなのか、柔らかかった森の緑も一際濃くなり、そして背の高い女王オニユリが咲く頃になると、ようやく梅雨も明けて本格的な夏となる。

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2006年6月20日 (火)

アカバナユウゲショウ (赤花夕化粧)

アカバナユウゲショウ 傍らに咲くマーガレットの花よりも、もっと遠くへ…
ぐっと手を伸ばそうとしているアカバナユウゲショウの花。

アカバナユウゲショウ・・・(赤花夕化粧) アカバナ科 マツヨイグサ属 Oenothera rosea 花期:5~9月 南アメリカ原産の多年草

アカバナユウゲショウとは、5月のある日、夕刻の散歩で見かけたのが初めての出会いだった。
…と言って、花が咲いていたのかと思いきや、その時見たのは濃い紅色に小さくしぼんだ花ばかりだった。
その時は、「好日性の花かなぁ?」といぶかしく思いながら、近いうちに会えることを願ってその場を離れたが、後日、道端に咲くピンクの花を発見したとき、なぜかあの時のしおれた花が目に浮かんだ。
「ああ、あの時の…」

アカバナユウゲショウの花アカバナユウゲショウは一日花なので、その日咲いた花は閉じてしまう。
しかし夕化粧と言うくらいなので、夕方閉じるには早すぎる。
nancyが初めて見たのは、おそらく前日に咲いた花だったのだろう。

それにしても、この赤花夕化粧という名!
なんともあだっぽい、しっとりとした響きである。
夕暮れ過ぎ、粋な姐さんが鏡台(決してドレッサーではない)の前に佇み、すっと紅を差す。…思わずそんな光景が目に浮かぶ。
ただし、これらの写真は午後3時頃、それも明るい陽の下で撮ったもの。ということは、アカバナユウゲショウは夕方に咲き始めるということではないようだ。

アカバナユウゲショウは南アメリカ原産で、日本には明治の頃から栽培され始めたという。
つまりはお庭で大事に育てられていたお姫様が、ある日自由を求めて外に飛び出し、厳しい自然に順応して生き抜いてきたというわけである。
そう思うと、その柔らかな花色の影にたくましさが見え隠れする。

アカバナユウゲショウの花 アカバナユウゲショウの花は直径約1cm。
茎の上部の葉腋にピンク色の花を咲かせる。
花弁は4枚で丸く、紅色の脈が目立つ。
そして何より目に入るのが、柱頭と呼ばれる雌しべの頂部である。
アカバナユウゲショウの柱頭は花の大きさに比べて不釣り合いなほど大きく、先は4裂して十字に平開している。
タニウツギもそうだったが、雌しべが特徴的に発達している植物には、繁殖力のたくましいものが多いような気がする。

人の手から離れて自然の中で暮らしていくと言うことは、並大抵の苦労ではなかっただろう。
なにせ、いつなんどき草取りに遭って抜かれてしまうかもしれないのだ。
そのため、アカバナユウゲショウは頻繁に一日花を咲かせ、速やかに受精して種子を作ることをひたすら繰り返しているのである。

アカバナユウゲショウの花

ところで、アカバナユウゲショウさく果の形は極めておもしろい。
右の写真、花の下の方に若いさく果が見えるが、上部が太く膨らみ、縦に8本の筋(実は稜)が入って、なんだか気球のような形をしているのだ。
マツヨイグサ属の花の基部には萼筒(がくとう)があり、更に萼筒の基部には子房があるのだが、大抵のマツヨイグサ属のさく果は細長い円柱形なのに比べ、バルーン型とは実にユーモラスな形状である。

このバルーン型にも理由があり、一つのさく果の中には多くの胚珠が入っていて、熟した暁にはぱっくりと4つに裂けて、中心に置かれたたくさんの種子が姿を現すことになる。(独立中央胎座と言う)
さく果…(蒴果) ホウセンカのように乾燥して種子をまき散らすような果実
萼筒…(がくとう) 萼片が癒合し、筒形または皿型になったもの
胚珠…(はいしゅ) 種子植物の種子になる部分

ところで、もしも「繁殖」の目的以外にアカバナユウゲショウが休み無く一日花を付ける理由があるならば、それは防御のためではないだろうか?
こんな儚げな花が咲いていれば、あの悪夢のような草刈りから除けられる可能性が高いのである。
スミレしかり、タカサゴユリもしかりである。
彼らにとって最大の協力者は人間なのだ。
アカバナユウゲショウの一番の武器は、なんと言ってもこの可愛らしいピンク色の花。
蒸し暑い時期にこの花を見て、憎く思う人はいないだろう。
攻撃こそ最大の防御なり…と言うわけで、重たい梅雨空のもと、人々の心を味方に付けたお姫様は、今日も可憐に咲いているのである。

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2006年6月 7日 (水)

お菓子ような …カルミア

ムカデ騒ぎのお陰で、すっかり予定が狂ってしまった。
梅雨入りの声も聞こえてきたし、ここはちょっときれいな花でも愛でようか…

カルミアの花久しぶりに山から離れて、家周辺に植栽されたお花の話を。カルミアの花だ。

カルミアとは、昨年しげしげ見つめ合い、「この世にこんな花があるのぉ~~?!」とびっくりし、めっちゃ魅せられたものの、なぜかエントリーするまでに至らず、花期を逸してしまった経緯がある。
ちなみに、今春エントリーできなかった花は非常~に多い。
仕方ない、来年に期待しよう…と、自分をなぐさめている。(苦笑)
…と、また話が飛んでしまった。(謝)

カルミア・・・ツツジ科 カルミア属 Kalmia latifolia 花期5~6月 北米原産の常緑低木 別名:アメリカシャクナゲ、ハナガサシャクナゲ

カルミアの花

カルミアの花には、細かい言葉はいらないだろう。
写真を見て貰えばわかるほどのおもしろさだ。
花もおもしろいが、まずはその前につぼみ
一言で言って、おいしそう!なのである。
これはもう説明いらないだろう。
誰だって、「え~~?!」って思うに違いない。
そう!まさに「絞り出した生クリーム」そのもの!
または、ホワイト&イチゴのア○ロチョコって感じ。

カルミアの花 つぼみがおもしろいなら花もおもしろい。
別名の「ハナガサシャクナゲ」はまさにぴったりな呼び名で、傘をひっくり返したような形状の花の中に、これまた傘の骨そっくりに雄しべが10本放射線状に位置しているのである。いったいどういう事情でこういう形の花になったのか、一度カルミアにインタビューしてみたいところである。

カルミアのような咲き方を集散花序と呼ぶが、最初の花は軸の先端につき、その下から出る側枝に次の花をつける。これをくり返して次々に花が付いていくため、ちょっと見たところ折り紙細工のくす玉のようで、非常に豪華だ。

ツツジ科ということで、カルミアは見ての通り合弁花なのだが、ツツジには似ても似つかない。
ただし、「アメリカシャクナゲ」という別名の通り、シャクナゲの花を思い浮かべれば、うん、確かに近いようである。

カルミアはアメリカで生まれ育った花で、ペンシルバニアとコネチカットの州花だという。
ここではペンシルバニア州での逸話をご紹介しよう。
ペンシルバニア州では1927年に State Flower(州花)として、州の原産である「チューリップの木」(Liriodendron tulipifera) を採用しようという動きがあった。
この「チューリップの木」こそ、エントリーしたばかりの「ユリノキ」なのである。へぇ~!なんだか縁を感じてしまうではないか!

しかしこの動きがその後発展することはなく、ユリノキは州花となり得なかった。
その後、ある針葉樹の一種(ツガ材と思われる)を州の木としてはどうかという声が起こるが、これも決定までに至らなかった。

次第に人々の間で公式な州花を望む声が高まり、ここで候補に上がったのが、ピンクのアザレア(the pink azalea )と、カルミア(the mountain laurel)だったのである。
しかし、それぞれの花を支持する人たちが相譲らず、最終的に知事の判断に委ねられることとなった。

ここで当時の Pinchot 州知事があっさりとカルミアに決定したら、まったくつまらない話なのだが、彼は本当はピンクのアザレアの方が好きだったというのである。
しかし、あれこれ専門家にうるさく言われて面倒くさくなってしまったのか、それとも奥さんに頭が上がらなかったのか、判断は彼の奥さんに任され、1933年5月5日、晴れてカルミアをペンシルバニア州花とする法律が調印されたのである。
当時の事情をあくまで勝手に推測してみただけだが、カルミアは恐妻家のお陰で州花になったようで、なんだか可笑しくなった。(失礼)

カルミアの葉最後に一つ。カルミアの葉は有毒である。もっとも、ツツジ類はおしなべて有毒植物だ。
ドウダンツツジだって有毒だからシカが多い場所でも食い荒らされないわけなので、過分に恐れることはないが、おいしそうなカルミアのつぼみに惹かれてゆめゆめ口になさらぬよう、ご留意あれ。

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2006年4月 2日 (日)

たくましき春の妖精 …コスミレ

昨日とは打って変わって、今日は朝から冷たい雨。
なかなか冬支度から離れられないが、周囲の植物を見ればやっぱり春なのだ。
そうかと思えば昨年の4月末には、もう寝苦しいほどの蒸し暑い夜が訪れていた。
ここ最近の極端な温度変化は、いったい何を意味するのだろうか。

コスミレさて、身近な春からコスミレの話。この春二度目の登場である。
昨年、道路とブロック塀のわずかな隙間に咲いているコスミレを見て不思議に感じたこと。
良さそうな土がすぐ近くにたくさんあるのに、なぜわざわざこんな所に芽吹くのか?
とは言え、周囲には仲間のコスミレが見当たらないのはなぜか?

コスミレ・・・スミレ科 スミレ属 Viola japonica 人家近くや山野に生える。

コスミレの種は(パンジーやビオラなどと同じように)、果実が熟すると3裂した果皮から、種が勢いよくはじけ飛んでいく。
これを自力散布と呼ぶが、その飛距離、なんと2~5mくらいにも及ぶらしい。しかしそれならば、四方には仲間のコスミレがたくさん咲くことになる。
もちろん、そうした群落となって咲くものも多いのだろうが、中にはこの写真のように、ぽつんとひとり存在しているコスミレを見かけることがあるのだ。
ざっと見渡してみてもコスミレの影など見ないのに、おまけにちゃんとした土に芽生えればいいのに、なぜアスファルトの割れ目や石垣の隙間から顔を出すのだろうか?

その訳は、コスミレの種に秘密がある。
コスミレの種には、エライオソーム(Elaiosome 別名:種枕)という、アリの大好物なゼリー状の物質が付着しているのだ。
スミレは、この「おいしいご褒美」を使って、種をアリに運んで貰うのである。

エライオソームは、アリにとっては文字通り垂涎もので、各種脂肪酸、アミノ酸、ショ糖などで構成されており、アリはたまらずエライオソームの付いたスミレの種ごと巣に持ち帰る。
果たして地中深い巣に運ばれたスミレの種は、アリに食べられてしまいましたとさ。…では話にならない。ご安心あれ、アリはスミレの種は食べないのだ。
しかし、食べられないまでも地中深く持ち運ばれてしまったら、地上での芽吹きは不可能なこととなる。そこがポイントで、これもコスミレの作戦のうちなのだ。

アリがエライオソームを食べ終わった後、残ったコスミレの種はアリにとっては不要なゴミとなるのだが、そこはさすがの働き者。役に立たないゴミは、さっさと巣の外に運び出されるのである。

アリはアスファルトの裂け目や石垣の間などにもよく巣を作る。雨で土が崩れることもないし水はけ良好、アリの住宅としては意外に良い物件なのだろう。
アリが住みやすいなら、コスミレにとっても同じである。
コスミレの好きな「水はけの良さ」はばっちり、おまけに巣のまわりには他のゴミも捨てられているから、コスミレが育つのに必要な水分や栄養分も豊富という、まさに好条件が揃っているというわけなのだ。

というわけで、自力散布ではもう一つ届かない場所までアリに運んで貰うこの方法を、アリ散布と呼び、コスミレやスミレ、タチツボスミレたち、シソ科のホトケノザヒメオドリコソウ、カタバミ科のカタバミ、ケシ科のムラサキケマン、ジロボウエンゴサクなど、約200種の植物がこうした仕組みを持っている。

誰に教えて貰ったわけでもないのに、絶妙な方法でたくましく子孫を残していく春の妖精コスミレ。しかし、用意周到な彼らの作戦は、この一つだけではないのだ。
その続きは、またの機会に…

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2006年4月 1日 (土)

春の陽に誘われて… オオヤマザクラ?

暖かさと寒さがせめぎ合っている。
終雪の後…なんてタイトルで書いたあとに、思いも掛けない降雪!
なんとも激しい攻防戦である。

今朝も冷え込んだが、日が出ればそこは4月の太陽、「お!うっかり寝過ごしちゃった…」って焦ったのか、慌てて辺りを暖めだしたものだから、気温の上昇スピードがすごい。
朝はフリースを着てファンヒーターの前で震えていたのに、9時過ぎにプリちゃんに乗ったら、今度は冷やす方のエアコンなのだ。これにはもうあきれてしまった。

早咲きの桜さてさて、あのすさまじい寒気のお陰でソメイヨシノの開花はちょっとだけお預けになってしまった。不思議なことに毎年桜前線は東京の方が早いのだ。

その代わりと言っては何だが、早咲きの桜が満開を迎え、その華やかさに思わず心奪われた。
桜の同定は難しいらしいので自信のほどは今ひとつだが、オオヤマザクラ?あるいはその交配種だろうか?

オオヤマザクラ・・・(大山桜) バラ科 サクラ属 Cerasus sargentii  別名: エゾヤマザクラ,ベニヤマザクラ

オオヤマザクラ オオヤマザクラは、ヤマザクラと同じく、葉が開花と同時に展開する桜だ。
このサクラが咲いていたところは、山にほど近い川上の土手の上で、ここは風当たりも相当強い。
それでもこれだけたくさんの花を付けるのだから、寒さには相当強そうである。

今にも開かんばかりに膨らんだつぼみをたくさん付けたソメイヨシノに囲まれて、今が盛りと咲くその花の色は暖かな春の色だった。
思わず、もう雪は勘弁して欲しいよねぇ~とつぶやいた。

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2006年3月15日 (水)

終雪の後 ~さくらんぼの花

まさに言葉通りの三寒四温である。

昨夜、このエントリーを半分まで書いていたのだが、その書き出しが「う~~寒い!寒すぎる!」だった。
ところが、昨日の雪がちらつく「度が過ぎた寒さ」から、今日の「度が過ぎた暖かさ」へと、一気にワープしたものだから、続きを書こうとして「下書き原稿」を開けたとたん、のっけから書き直しする羽目になった。(小涙)
とは言え、…「暖かさ」は、もろ手を挙げての大歓迎!ここは文句を言わず、よしとしよう。

ここのところの気温の変動が激しすぎて、我が家でも、家族3名中風邪引きさんが約2名。
娘など、発熱のためにとうとう学校を休んでしまった。
果たして、1人残ったnancyの運命やいかに……;

カラミザクラの花さてさて、毎年我が家にふくよかな春を運んでくれるもの。
…それは、玄関から出たところに植えてある、「さくらんぼの木」の花である。
一口に「さくらんぼ」と言っても、これは単なる通称らしく、「さくらんぼ」という木はないのだが、ここで疑問。
果たして我が家の「さくらんぼの木」はなんなのだろう?
ちなみに、植えた張本人に訊いたところ、「忘れた。」の一言で終わってしまった。(苦笑)

この木、背丈は低いながらもよく分枝して、3月上旬から淡いピンクの花をびっしりと咲かせ、nancy家を春爛漫に包み込んでくれるのだが、もちろん、花の後にはお楽しみのさくらんぼが待っている。まさに一粒で二度美味しいのである。(古!)

通常、生食用のさくらんぼというとセイヨウミザクラ(西洋実桜)の交配種なのだが、佐藤錦などは花色が白く、花期も遅い。
また、実を付けるためには2種類の木が必要になってくる。
我が家にはこの木が1本あるだけなのだから、すなわちこの木は自家受粉で結実できるということになる。
つまり、花期や花の特徴などから考えても、この花はセイヨウミザクラではなく、カラミザクラ (シナミザクラ)、またはこの交配種なのではないかと思う。
また、カラミザクラの実は、柔らかいが食味はいわゆるさくらんぼの味に近く、その点でも我が家のさくらんぼの特徴とぴったり符合するのである。

カラミザクラ・・・(唐実桜) バラ科 サクラ属 Cerasus pseudocerasus 別名:シナミザクラ 中国原産 明治初期に中国から渡来

カラミザクラの花その花は、雄しべが長く、花も大きく、大変豪華だ。
梅より一足早く咲き出し、先週土曜の暖かさのお陰で一気に満開になった。
しかし、毎年満開になった後には必ず催花雨(菜種梅雨)に打たれ、厳しい寒の戻りに見舞われるのである。
「まさか雪まで降るとは思わなかった…」と、寒さに耐えて必死に花を持たせ、今日はまた、うららかな日差しの中でハナバチを誘っていた。

彼らを包むのは、穏やかなだけでなく、同時に厳しさを見せつつ進む春。
だから春、これぞ春なのである。

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2006年2月28日 (火)

ソシンロウバイ (素心蝋梅)

ソシンロウバイ 10日ほど前の写真で恐縮だが、近所のソシンロウバイが見頃を迎えていた。
昨年、ソシンロウバイについて書いたのが1月8日のことであるから、いくら昨年が暖冬だったとは言え、一ヶ月以上も遅い。
冬に咲くソシンロウバイにとっても、この冬はさぞかし寒かったと見える。

ソシンロウバイ・・・(素心蝋梅) ロウバイ科 ロウバイ属 Chimonanthus praecox f. concolor  落葉低木

同じ頃、山の公園で見掛けたソシンロウバイはつぼみの数もまばらな状態で、今年はいくらも咲かないだろうと思われたほどだったが、この写真の個体はあまり風が当たらない場所でもあり、よく丹精されていることもあってか、実にたくさんの花を付けていた。

「ロウバイ」とは、本来は花の内側の“花被片”が暗紫色をしているものを指し、このソシンロウバイは、内側も黄色一色な花を咲かせる園芸品種である。
花心も素の色であることからか、「素心蝋梅」との名が付いているのだが、花が大きく見栄えがするため、ロウバイよりも見掛ける機会が遙かに多いように思う。
このソシンロウバイとロウバイをひっくるめて、「ロウバイ」と呼ばれることも多いようだ。
※花被片…花被とは、花冠と萼の区別がつかないような花で使われる用語で、萼または花びらのこと。)

ソシンロウバイの花その花は、光が半分透けたような独特の質感と言い、硬めの手触りといい、まさに蝋細工の花といった感じ。
多くの花が恥ずかしげに下を向いて咲いている中で、この写真の花はこちらを向いて微笑んで見せた。

ソシンロウバイ ソシンロウバイの独特な枝振りは、見事なまでの対生である。
その凛とした気品溢れる姿は、生け花の花材としてもよく使われている。
nancyも、はじめてソシンロウバイを見たのは、姉が活けた水盤の上だった。
花持ちも良く、すがすがしい香りで辺りを包み込み、なんと気品溢れるお花だろうかと感激したのを覚えている。

さて、例年通り、2月はあっという間に逃げてしまう。
来る3月には、一気に去られることなく、なんとか少しでも追いつきたいと思っているが、果たしてどうなることやら…

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2006年2月26日 (日)

ミチタネツケバナ (路種浸花)その2

ミチタネツケバナの花 ミチタネツケバナ、その2である。
引き続き、在来種であるタネツケバナと、外来種のミチタネツケバナとの違いについて考えてみたい。

さて、花の違いはどんなものだろうか?
花びらの数はアブラナ科の特徴としてお決まりの4枚だが、雄しべの数が違う。タネツケバナ6本、ミチタネツケバナは4本である。しかし、そうでない場合もあるし、あまりに小さな花ゆえ、なかなか確認しづらいだろう。

ミチタネツケバナ 一番違いの出るのが、長角果と呼ばれるさく果である。
タネツケバナでも書いたが、ミチタネツケバナの長角果は茎に添い、まるで空に向かってばんざ~い!と手を挙げているようだ。
こうして花を咲かせながらどんどん種を結び、上へ上へと伸びていくのである。
さく果:ホウセンカのように縦に裂けて種をまき散らすもの

この長いさく果、まさに長角果という呼び名がぴったりだが、花が受粉すると円柱状の雌しべがぐ~んと伸びていき、やがて熟して2つにはじけて種を勢いよく周囲にまき散らし、かくして飛んだ種から新たなミチタネツケバナが誕生するというわけだ。

タネツケバナは湿地を好むが、ヨーロッパ生まれのミチタネツケバナは、やや乾燥した場所を好む。
両者の住み分けがきちんとなされていれば問題はなさそうだが、実際のところミチタネツケバナは住む場所を選ばないので、今やいたるところで見ることができる。
それに比べ、種籾(たねもみ)を水に浸ける時期に咲いたからとその名を付けられた「タネツケバナ」は、水田の減少もあって次第に少なくなっているように思う。
これはセイヨウタンポポの勝利と同じで、人為的環境変化に伴い適応能力の高いものが生き残るという、当たり前の構図なのであるが、外来植物ばかりが悪いのではなく、全ては人間が招いた変化であることを忘れてはならない。

おそらくは雑草として抜かれることの多い草たちである。
せめては何気なく手に取ろうとしたとき、ふと何かを思って下されば幸いである。

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