2007年2月14日 (水)

スズカカンアオイを辿って その2

冬の小道この小道は、nancyにとって宝箱のような場所だ。
鮮やかな5月には、チゴユリキンランとここで出会った。
5月の出会いはこちら⇒2006年5月のアーカイブ
そして、スズカカンアオイとの出会いである。

というわけで、あらためてこの小道を歩いた。
5月に見つけた数株の在処は記憶に残っている。
しかし、改めてスズカカンアオイを探す視点になってみると、冬の小道は少し勝手が違っていた。
この場所はコナラなどの落葉樹が多く、彼らの落ち葉によって辺りはすっぽりと覆われていたのである。
とは言え、雪に覆われているよりはずっといいが。

スズカカンアオイゆっくり歩を進めながら株の在処を確認する。
程なく落ち葉にまみれた2枚の葉が目に止まった。
スズカカンアオイだ。

ここで訂正というか説明なのだが、カンアオイの「一株」とは、この株のような、せいぜい葉が2~3枚ある程度らしいのである。
つまり、前回スズカカンアオイを辿って その1で書いたあの大株は、実はたくさんの株の集まりということができるのだ。
ぽつんと離れて一株、また一株と言った感じで、あまり群生しているとは言い難い孤独な雰囲気のスズカカンアオイだが、実際には大所帯でいることもあるのである。
これを知ってなんとなくほっとした。

さて、ギフチョウの食草としても知られるスズカカンアオイであるのに、わずかな葉をぺろりと食べられて個体が枯れてしまったら元も子もなく、種の保存すら危うくなる。
つまりは、この少ない葉だけで株の栄養を一手に担っているわけではないだろう。

ということは、地面の下には栄養を貯えた地下茎が存在していることになるのだが、チゴユリのように地下茎による栄養繁殖でもするのかと思いきや、彼らカンアオイたちの地下茎は、成長するスピードが著しくゆっくりで、年間にわずか数mmしか成長しないと言う。

昨年5月に見たときも、この個体は2~3枚しか葉を持っていなかったことを考えても、彼らは簡単に大きくなるわけでも、増えるわけでもない。
やっぱり自然界に於けるカンアオイの繁殖能力は、恐ろしく低いのである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年2月13日 (火)

スズカカンアオイを辿って その1

寒くなったら会いに行こう…

ふと思い出したフレーズだった。誓ったのは昨年の5月。
でも、いったい誰に会いに行くんだっけ?…

最近とみに記憶障害激しき(?)nancyの頭の中をまさぐると、かすかに見えてきた濃緑色の葉っぱ。それは、肉厚で斑が入っていて…
ここまで来てようやく会いに行く相手がわかったnancyは、「山に行こう!」と、娘に宣言した。

…と、ここまで書いていたのは1月終わりのことである。
ああ、なんと時間の経つのは速いものだろうか…(涙)

スズカカンアオイ・・・(鈴鹿寒葵)ウマノスズクサ科 カンアオイ属 Asarum kooyanum Makino var. brachypodion 分布:岐阜、静岡、愛知、三重、滋賀 ギフチョウの食草として知られる

スズカカンアオイ_01

先にも書いたがスズカカンアオイと初めて会ったのは、昨年の5月。
季節はずれの暑さの中でだった。
美しく斑が入った厚みのある葉は、艶があり瑞々しくも深い緑色。
「あ…アオイ?」
"アオイ"と出てきただけまだましで、当時nancyには「アオイ=葵の御紋」くらいしか知識が無かった。
※「葵の御紋」のアオイは、フタバアオイ Asarum caulescensである。

実はこれはスズカカンアオイとしてはかなり立派な株らしく、これ以上大きな株はいまだ目にしていない。
だからこそ、特別意識もしないで歩いていたnancyの目を惹いたのだろう。

自宅に帰って早速図鑑で調べるが、「はて?」と思った。
カンアオイは葉の変異が多く、とても斑の入り方だけでは同定できないらしいのだが、どのカンアオイも、非常に分布範囲が狭いのである。
お陰でこのカンアオイは岐阜、静岡、愛知、三重、滋賀に分布するスズカカンアオイであろうと同定された訳なのだが、この分布の狭さは何によるものか?

多くの植物は、より広くより遠くへと己が遺伝子を拡散させることを企てていると思うのだが、彼らカンアオイに関しては、どうもそれが当てはまりそうもない。
「寒葵」と言うくらいだから、カンアオイの花の多くは寒い冬に咲くのだが、当たり前だがこの時期は、媒介してくれる虫たちは少ない。
おまけにその花はひっそりと土や枯れ葉に埋もれて咲くのである。

今まで恥ずかしがり屋の花には幾度と無く会ったが、カンアオイはそれを通り越し、敢えて隠れて咲くのであるから、これはまったくもって一般常識の範疇を越えているのである。

スズカカンアオイの花後 さて、再び昨年5月に戻ろう。
もう一度スズカカンアオイに会いに行き、どきどきしながら葉をかき分け、落ち葉や土を指でそっと払うと、既に結実したあとの花が姿を現した。
これが初めて見るカンアオイの花、正確には「花後の姿」である。

まるで親鳥の羽根に大切に守られた巣の中の雛のようだ。
そして思った。是非とも咲いたばかりの花を見てみたい。

図鑑によると花期は3~5月とあったが、この暖冬の影響で早まることも考えられる。
また、インターネットで調べると10~2月とも、1~4月ともある。
う~ん、いったいいつなんだ…
ともかく、善は急げ!とばかりに山へ繰り出したのは、1月21日のことだった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年12月26日 (火)

モミの木の赤ちゃん

モミの木の幼木 最低限の整備をされてはいるが、滅多に人とすれ違うことなどない、小さな山の小道で、モミの木の幼木と出会った。

モミの木が自然淘汰されるまでの時間(つまり寿命)はおよそ500年というから、この幼木は、この世に生を受けたばかりの赤ちゃんと言ってもいいだろう。
見たところ、樹高はおよそ50cm。
これも、人間の赤ちゃんの背丈ほど…と言った方がいいかもしれない。
昨年この山に登ったときにはまったく気が付かなかったが、きっとモミの実を好むリスやサルの落とし物から芽生えたのだろう…

モミ・・・(樅) マツ科 モミ属 Abies firma 日本特産の針葉樹 分布:本州~九州

山の小道とは言っても、薄暗い森の中ではない。
尾根筋とでも呼ぶべきだろうか、つまりはモミの好む、すこぶる水はけの良さそうな場所である。
しかし、この道は人ひとりがやっと通れる程度の道幅しかない。
成長したこのモミの木は、そのうち道をふさいでしまうかも…と少し心配になった。

モミは大きなもので40mにもなる常緑高木だから、もっとずっと先には遙かに背丈が伸びて、枝が道を通せんぼすることはなくなるのにな…でも、せっかちな人間はそれまで待てないだろうな…

昨年の「モミの木」はこちら
モミの木とシベリウス
モミの木とクリスマス・ツリー

モミの木

モミは日本特産の針葉樹である。
なんだかバタ臭い雰囲気のあるモミの木だが、日本人とは切っても切れない縁で結ばれてきた。
ちょっとびっくりするが、誰しもきっと一度は入るだろうお棺や、お墓に立てられる卒塔婆(そとば)が、モミの木で作られているのだという。
その他、結納台に、小田原かまぼこの板…。これらにもモミが使われている。
それは、モミの板が白くて無味無臭であり、見た目にも清浄な雰囲気があるからだが、実際モミの材に、抗菌性調湿性有害物質を吸い取り除去する効果のあることが、昔の人たちにはわかっていたのである。
なんだか今まで抱いていたモミのイメージが、がらっと変わってくるではないか。

モミの木の葉先 さて、こんなに小さくても、モミの同定はたやすい。
いや、“小さいからこそ”、かもしれない。
モミの葉先は、ちょうど先割れスプーンみたいに2つに割れてとがっているのだが、成木になるとこの特徴は薄れて、とがっていた先も丸くなるのである。
だから、どこかでモミの木を見つけて葉先が2つに割れてとがっていれば、その個体はまだ若い、ということになる。

ちなみに、同科ツガ属のツガもよく似た葉を持っているが、ツガの葉の長さは1~2cmと、モミの2~3cmより短く、またツガの葉は2つには割れずわずかな窪みがあるだけなので、注意すれば見誤ることは少ないだろう。

さて、モミの木は大気汚染に敏感な植物で、およそ都会の汚れた空気の中では育たない。
つまり、このモミの木の赤ちゃんは、この場所が間違いなく空気のきれいなところであると、身をもって証明してくれている…というわけなのだ。

これこそが、一見何にもなくてつまらなそうなこの山の、一番の贈り物なのだと思った。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年12月 9日 (土)

ヤブコウジ

以下、「それが今頃どうした?」の話題で恐縮だが…
12月に入ってしばらくの間、怒濤の忙しさが続いていた。(もっとも、nancyの忙しさなんて、たかが知れているが…)
それも無事に明け、この「ヤブコウジ」が下書き保存のままだったのでアクセスしようとするも…「あれ?メンテナンスかしら?」
ま、最近すっかりブログもさぼり気味なので、この時はあまり気にしなかったのだが…

翌日になってアクセスするも、「あれ?…まだメンテ?」
…なんと、ニフティは56時間もメンテをしていたらしいのである。

そう言えば、前も2日間メンテがあったっけ… 
しかし、それが3日となると大記録である。次は4日か?
さすがのニフ、何事においても記録を作るものよのぉ~(拍手喝采)
なんてことを思いながら、それだけ長いメンテだもの、どんな変化があるのだろう?
と、楽しみに開けたのだが、
「あれ、?なんの変化も無いぢゃない。。。」

なんと、メンテしたらなぜか負荷が高まっちゃったので、とりあえずメンテ前に戻しました。ですと…。
う~ん、さすがのニフティ、3日も留め置いて良い仕事してくれるものである。
今度こそフリーにしようかしら… (泣)

さてさて、気を取り直そうか…話がヤブコウジでなかったら、またもお蔵入りになるところであった…(苦笑)

ヤブコウジヤブコウジは、小さな小さな木。
左の写真の個体でだいたい樹高10cmほど。
こう見えても幼木じゃない。これでも立派な成木なのだ。

世界一小さな樹木…というわけではないが、こんなにきれいにちんまりとまとまっていて、これが作り物じゃないなんて、誰が信じるだろう…
しっかりとした厚みのある葉には光沢があり、縁にははっきりとした鋸歯(ぎざぎざ)がある。
なりこそ小さいが、ヤブコウジのイメージは弱々しさとは無縁だ。

ヤブコウジ・・・(藪柑子) ヤブコウジ属 ヤブコウジ科 Ardisia japonica 常緑小低木 樹高10~20cm 分布:本州、四国、九州 別名:十両

ヤブコウジは平安の昔から日本の山で生きてきた。
小さな身体に常緑の葉をまとい、ちょこんと赤い実を付けた可愛らしいヤブコウジは、永きに渡って日本人に愛され続けてきた。
たとえ‘なり'は小さくても、艶のある真っ赤な実ははっきりと存在を主張して、見る者の心に何かを刻みつける。

ヤブコウジさて、ヤブコウジは仲間と共にいることが多い。(余談だが、背後にはソヨゴの葉、手前にはテイカカズラの幼木が顔を出している。)
この写真でも、周囲に仲良く写りこんだヤブコウジを認めることができる。実は彼らは地下茎で結ばれているのである。・・・と言うよりも、発達した地下茎が分枝して、明るく条件の良さそうな地上を見つけては、ちょこんと地上茎が顔を出すのだ、とも言える。

そう考えれば、付近のヤブコウジは全て同じ個体とも言える。
やれ、小さい小さいと書いては来たが、全体で一つの生命を有するのならば、それほど小さな樹木とは言えないのかもしれなく、これは、先頃エントリーしたばかりのテンニンソウとも共通することなのかもしれない。

ヤブコウジ

人間は、とかく目に見える範囲のことで物事を判断して、手前勝手な基準を設けてしまいがちだ。
足下のちっぽけなヤブコウジ、見た目は草っぽいが、実は樹木であるテンニンソウ

「星の王子様」に出てくる帽子の絵が、実は大きな象を飲み込んだうわばみかもしれないことを、常に謙虚な気持ちで受け止めるべきなのだ。

本当に大切なものは目に見えないんだよ。
(物事の本質は眼では見えない)

この小さな山を登っていると、「樹木の根」の存在が、いかに山を支えているかと教えられるのだが、ヤブコウジもまた、その地下茎でしっかりと山を支える仲間の一つなのである。
山=地球=宇宙にも思え、彼らがいかに多くのことを教えてくれるかと、今さらながら気づかされたのだった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年11月28日 (火)

東屋のわきで… ヤブコウジの赤い実

山の道…と言うわけで?登りだしたわけだが、歩くのは昨年と同じルートである。(…てか、それしかない)
標高500m程度の小さな山だが、それとて登るのは意外にきつい。
ルートのほとんどが人ひとり歩くのもやっとの細い道であり、足下には枯れ葉が多く滑りやすいのだ。

昨年のnancyの興味はどちらかというと樹木よりも草本に目が向いていたから、似たような木ばかりで樹下にはシダ植物が生い茂るこの山に行きたがる娘の気が知れなかった。
しかし、歩き始めて間もなく、そんな気持ちは変わっていったのである。
あれ、この山ってこんなに面白かったっけ?

さて、ちょっときつめの坂をがんばって一気に上ると、東屋(あずまや)に出る。
この東屋については昨年ぷち登山 その2で書いたが、もちろんここで昼食タイムとなる。
なにせこの小さな山では、この東屋を過ぎると「平らで落ち着ける場所」にあずかることは難しくなるのだ。

早速、お待ちかねのおにぎり(薄味の梅菜めしに、中身は焼きたらこ)登場!なのだが、お待ちかねどころか、まだスタートして30分も経っていない。
実は、今回も家を出るのが遅くなり、とっくにお昼時間を過ぎていたのである。
しかし、家でお昼を食べて出るほど我々は愚かではない。(笑)
「東屋でおいしいおにぎりを食べる」という目的を達成するための綿密な計算に基づき、おにぎりと同時に空腹をこしらえてきたのである。(汗)
もちろん、澄んだ空気の中で食べるおにぎりのおいしさは言うまでもなく、ミルクもおやつを貰って、つかの間の幸せ気分が広がった。

ヤブコウジさて、出遅れたのであるからそうそうのんびりしてはいられない。
すっかり口癖になってしまった、秋の陽はつるべ落とし
二つずつある大きめのおにぎりを、それぞれ一つずつ残して東屋から降りると、ヤブの中に小さな赤い実が光っているのを見つけた。

あ、ヤブコウジだ…

ヤブコウジ・・・(藪柑子) ヤブコウジ属 ヤブコウジ科 Ardisia japonica 別名:ジュウリョウ 常緑小低木

小さなかわいいヤブコウジ
早速しゃがんでカメラを向けると、ふと思い出した。
確か、昨年もここでヤブコウジに会って、こうして写真を撮ったっけ…
同じ場所で同じ顔に出会ったので、ついうれしくなってしまった。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2006年11月14日 (火)

今度は毛虫? テンニンソウ

テンニンソウの花 ようやく満開となったテンニンソウである。
実際には、10月後半のことなのだが。

ヒノキの大木の下、イモムシから歯ブラシへと変化したテンニンソウ、その後はぐるりと円筒状に、次々と淡黄色の花を咲かせていった。

テンニンソウ・・・(天人草) テンニンソウ属 シソ科 Leucosceptrum japonicum 花期:10月 落葉半低木

さて注目。上の「半低木」とは、草のように見える樹木のことだ。
つまり、テンニンソウはいかにも草っぽいし、名前に「草」とは付くが、左サイドバーの白岩先生の植物教室によると、実を言うとこう見えても木本、樹木なのである。

そこで気になる「草本と木本の違い」についてだが、めちゃくちゃ簡単に無理矢理一言でざっくり言えば、「茎の周りに形成層があって年々太く育っていくものが木である」のだが、無論これも一概には言えないらしい。

ともあれ、テンニンソウは木本である。
地上部の茎は草状で、冬など「生育に不適な時期」には枯れるのだが、下部や地下茎は木質化しており、大きく全体を見れば立派な樹木なのだ。
発達した地下茎によって、地上では大群落を形成することもある。
そうなれば、群落そっくり丸ごと、一つの樹木とも言えるのかも知れない。

テンニンソウの花というわけで再びテンニンソウの花を見つめてみると、う~ん、今度はイモムシから毛虫へ???
なぜかnancyの想像はキモカワ系に行ってしまうのだが、実際テンニンソウの花は、あまり美しいとは評されない。

それなのになぜ「天人」などという素晴らしい名が付いたのか…
通説では、テンニンソウの葉はアブラムシたちの格好の餌食になりやすく、ひどくぼろぼろに食われた葉がまるで天人の羽衣のようだから付けられたらしい、というのだが…

以下はあくまでnancyの想像だが…
薄暗い森の道沿いに群生したテンニンソウの花は、そこだけほんのりと明るく見える。
つるべ落としの秋の陽…。人工的な強い光のない森の中で、テンニンソウの花の放つぼんやりとした明るさは、道急ぐ人にどれほど安心感をもたらしたことだろうか。

もちろん、テンニンソウと名付けた人は相当なロマンチストであったに違いないし、もしかしたらすごく良いことがあって、すこぶる機嫌が良かったのかもしれないが、薄暗い山の中で出会ったテンニンソウの群落に天人を見出したとしても、ちっとも不思議ではない。
常に煌々と光が溢れ、闇夜と同時にメルヘンをも失った現代においては、決してテンニンソウなどという風雅な名が付くことはないだろう。

テンニンソウの花後 さて、ようやくテンニンソウの現在の姿に追いついた。
とある低山での一コマであるが、半分道に迷いながらなんとか降りたところに沢があり、迷っているのについ好奇心を押さえきれず進んでみると、木陰に隠れたテンニンソウに偶然出会えたのである。
道に迷った心細さの中で、ばったりと知人に出会えたような気持ちになったのを覚えている。

小さな滝の音が常に聞こえる中、沢沿いのテンニンソウの花穂は、既に萼片を身にまとうばかりとなっていた。
もちろん、その中では大切な種が育っている。

(nancyが勝手に、であるが)イモムシから歯ブラシ、毛虫…と、転生を繰り返したテンニンソウ、ここに来て初めてシソ科らしさが見えてきたような気がした。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2006年11月 9日 (木)

イモムシに別れを告げて テンニンソウ

11月に入ってなお時の流れは加速度を増して、この分ではあっという間に年末だ。
毎年のことながら、思いやられる今日この頃である。

テンニンソウの花さてテンニンソウ
いよいよ開花である。イモムシともお別れの時が来たのだ。
ちなみにこれは幼苗の方のテンニンソウ
つぼみがまばらなので観察には打って付けである。

いったいどんな花が咲くのかと思ったら、粟粒のようなつぼみが開いて、ぴょんぴょんと飛び出したブラシの毛、毛、毛。
あれ、イモムシから今度は歯ブラシになるのか?…と言いたいくらい、なかなかな変身ぶりである。

テンニンソウの花イモムシを形成していた、あの幾重にも重なったはいったいどこへいったのだろう?
注意して見てみると、茶色に変色した苞のなれの果てが、花の付け根にしがみついている。
そう、イモムシと見まがうばかりにしっかりとつぼみを守ってきたは、その役目を終えると茶色に枯れ果て、静かに落ちていくのである。

テンニンソウの花、目立つ“毛”の正体は、4本の雄しべだ。
花自体は淡い黄色の唇形花であり、正直言ってまったく目立たない。
その代わりと言ってはなんだが、長く突き出した雄しべが華やかに主張しては虫を誘う。

テンニンソウが満開を迎える頃、巷では次第に昼夜の気温差が大きくなり、木の葉もそろそろその身を色とりどりに染め往くのである。

テンニンソウ・・・(天人草) テンニンソウ属 シソ科 Leucosceptrum japonicum 花期:10月

ところで余談だが、写真手前に黒く見える物体は、コバノカモメズルである。
これまた山野草の一つであり、その変わった形の実が、まさにカモメの飛んでいる姿に似ているので、この名がある。
実は今年、この花を撮ろうと開花を待っていたのに、まんまと失敗した。(悲)
なにせコントラストの低い、地味で極小な花である上、蔓の先で咲き、ほんの微風でも揺れまくるのだ。
なので、コバノカモメズルについては、運が良ければまた来年ご紹介することとしたい。
…とは、相変わらず気の長い話であった。(笑)

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2006年10月31日 (火)

イモムシ転じて… テンニンソウのつぼみ

テンニンソウは、2年越しで追いかけている花だ。
…そう言うと聞こえは良いが、要するに昨年エントリーし損ねただけなのである。(汗)
今年も既に最盛期は過ぎている。
毎年、似たようなことをやっているものだとつくづく思う。

テンニンソウ・・・(天人草) テンニンソウ属 シソ科 Leucosceptrum japonicum 花期:10月 

テンニンソウは、10月半ば過ぎ頃に咲く、秋の花だ。
もう、ぼちぼち花は終わりかけている頃だろう。

テンニンソウのつぼみ 最初にテンニンソウに出会ったのは、2005年10月10日頃のことだ。
それも娘の通うスイミング・スクールの敷地内でのことである。
だから、写真には白いフェンスが写っている。
実は、この場所自体が山の麓にあり、昔々森だった名残がそっくり残されている。
よって、こんな「山の植物」にお目に掛かることができるのだが、こんな場所でテンニンソウに出会うとは、正直意外だった。

テンニンソウのつぼみ意外ついでにもう一つ。最初に見たとき思ったのは、
なんだこれは???
…である。
葉っぱ自体は、難の変哲もなさそうな普通の葉っぱである。
ところが、その先になにやらへんてこな物体が付いている。これが、どう見てもでっかいイモムシにしか見えなかったのである。

探してみるとイモムシは他にも見つかった。 どうやら動く様子はない模様である。
つまりこれは、この植物の「つぼみ」ということなのか…?

撮影時にはテンニンソウという名前すらわかっていなかったのだが、いったいどんな花が咲くのだろうか…
期待は膨らんだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年10月 9日 (月)

冴えた秋空に輝く… クサギの実

クサギは、実に印象的な樹木である。
このところめっきり忙しくなって以前のように山へは行けないのだが、それでも赴くたび、心に何かを残してくれる樹木の一つなのだ。
ここに登場するのも4回目。すっかり常連さんとなった。
今年8月のクサギはこちら

クサギの実抜けるような青い空を背景に、輝くクサギの実。
それは言葉を失うほどに美しい光景。
一種金属的な光をも感じさせる「星形の萼片」に乗った、「群青色の丸い実」が誘うものは…

クサギ・・・(臭木) クマツヅラ科 クサギ属 Clerodendron trichotomum 北・本・四・九・沖縄に分布する落葉低木 花期8~10月

山は実りの時期を迎え、そこここに豊かな賑わいを見せていた。
鮮やかな木の実に誘われるのはnancyだけではない。
多くの木の実は、小鳥たちの為にある。
メジロにヤマガラたち…、その可愛らしい姿が驚くほど間近に来ると、ぐっと息を飲み込んだまま動けなくなってしまった。

クサギの実小鳥がおいしくお腹に納めた種は、発芽率が抜群に高くなる。
…もっと遠くへ、遙か遠くへ…
命あるものにとって絶対的な使命である、己が子孫を永く伝え、広く遷移させること。
食する鳥たちは命を繋ぎ、食される木の実もまた命を繋ぐ。
太古の昔に交わされた契約が、今も厳格に守り継がれているのだ。

風に頼むものあり、虫に頼むものあり。
それぞれに工夫を凝らしたその姿は、秋の陽を浴びて更に輝くのである。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2006年9月27日 (水)

アケボノシュスラン (曙繻子蘭)

アケボノシュスラン 小さな小さなその花は、たったひとりで咲いていた。
秘密の小道のその奥で、ただ、ひそやかに咲いていた…

アケボノシュスラン・・・(曙繻子蘭) ラン科 シュスラン属 Goodyera foliosa (Lindl.) Benth(標準) 山地の林内に生える常緑の多年草 草丈5~10cm 花期:8~9月 分布:本、四、九

久しぶりの山で、久しぶりの道を歩いた。
ここはまさに秘密の場所だ。
訪れる者はわずかと見え、誰かと出会った試しがない。
だからこその「出会い」が、ここにはある。

ここは、あのキンランと出会った小道よりも標高が高い。
太陽の強い光は木々に遮られ、淡い光の衣となって辺りを柔らかく包み込む。
常に山肌を湧き水が伝い、静かに渓流へと溶け込んでいく。
足下は常に湿っており、そこに漂う空気までもがしっとりとしている。
そんな環境の下、ここにはいろいろな湿地植物がひっそりと息いているのである。

Akebonoshusuranup2人ひとりがやっと歩けるような細い道。
山寄りに少し高くなった、水はけの良さそうなところに、アケボノシュスランは咲いていた。
アケボノシュスランは、本当に小さく、目立たない花だ。
その草丈はわずかに5~6cmほどか…
あたかも、そっと寄り添う恥ずかしがり屋の少女のようだ。
渓流の水の音響く足許で、その名の由来となったほんのり紅に染まる花が二つ、かすかに光っていた。

アケボノシュスランとは、これが初めての出会いである。
いったい何という花だろう…
とりあえず手持ちの図鑑をめくってみたが、まさかラン科のお花とは思わなかったので皆目わからない。
そこで、いつものように左サイドバー・リンク集のMOCAさんに教えを請うたのだった。

その花の名はアケボノシュスラン、もしかしたら上流か近隣に集団があるのかも…。この個体はまだ若い株のようだし、ここで増えてくれたらうれしいですね。…とのこと。

名前さえわかれば、さぁ満足…ではなかった。
アケボノシュスランは希少種で、地方自治体によっては絶滅危惧種に指定されている種である。
希少な野生蘭ということは、イコール盗掘の危険にさらされている花なのである。

Akebonoshusuranleaves nancyは「盗掘」という話を聞くたび、ひどく憂鬱な気分になってしまう。
例えばサギソウなどは、一度自生地から出たものは、二度とその地で根付くことが出来ないと言う。
こうして住み処を失われてしまった花たちのことを思うと、どうにも哀しくてたまらなくなってしまうのだ。

アケボノシュスランは、湿り気のある薄暗いところを好む。
湿度は必要だが蒸れは嫌い、水はけの良さも生育条件の一つとなる。
空気は決してよどむことなく、いつもわずかに風の感じられる場所。
すなわちアケボノシュスランは、こんな秘密の小道だからこそ咲く野生ランなのである。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧