2006年2月15日 (水)

タネツケバナ(種浸花)

タネツケバナのロゼット つかの間の暖かさに誘われて、ビオトープに行ってみた。
そこで見つけたタネツケバナのロゼット。

タネツケバナ・・・(種浸花) アブラナ科 タネツケバナ属 Cardamine flexuosa 水辺や湿地に群生する2年草(越年草)

タネツケバナは、ナズナによく似た花を咲かせる2年草。
タネツケとは、種もみ米を水に浸けて、苗代の準備をする頃咲く花ということから付いた名で、稲作と密接な関係がある名前である。
無論、水田まわりでよく見かける花であったが、近年nancy家界隈のあぜ道では外来種の「ミチタネツケバナ」がほとんどなので、カテゴリーでは湿地、及び水辺とした。

タネツケバナ タネツケバナのロゼット葉は、本当に可愛らしいと思う。
※奇数羽状複葉で、形が丸っこくて、なんかこう、小さなミトンが二つくっついたような感じ。

※羽状複葉(うじょうふくよう)…小葉が羽根のように葉軸の両側に付いて、一つの葉を形成しているもの(ハゼノキなど) 頂小葉が1枚だと奇数になる。
(ちなみに、タネツケバナの葉は、通常の羽状複葉とは若干様子が違っていることから、羽状に分裂した単葉という見方もある。)

さて、タネツケバナに似た花には、前述の「ミチタネツケバナ」という外来種があるが、これがまったくよく似ている。
「ミチ」と付くように、タネツケバナよりも若干乾燥した場所に分布するのだが、両者混在している場合もあり、見わけるのにはちょっぴり苦労するのだ。
もちろんいくつかの相違点が、あるにはある。

ミチタネツケバナの小葉はほとんど切れ込まない。つまり、上に書いた「ミトン」の指の部分が明確でなく、小葉全体がもっとなだらかに丸い。
また、タネツケバナは茎に毛が生えているが、ミチタネツケバナは無毛である。

タネツケバナの花 タネツケバナは、秋に芽吹いた芽がこうしてロゼット状態で冬を越し、春に花を咲かせる越年草だが、気の早い花はどこにでもいるものだ。
この写真の花など、すでに長角果と呼ばれる※さく果もつけている。
この長角果のつき方にもミチタネツケバナとの違いがあって、タネツケバナの長角果は、真横(写真では、茎に対してほぼ垂直)に張り出すイメージだ。
一方ミチタネツケバナの長角果は、茎に添い、上の方向に向かってつく。
※さく果:ホウセンカのように縦に裂けて種をまき散らすもの

3月並の気温の中、タネツケバナを見ていたら一気に春の気分にもなったが、またまた寒さがぶり返してくる模様だ。
つかの間とは言え暖かさを知った身には、また堪える寒さになるのだろうか…

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2005年11月19日 (土)

ヤマラッキョウ (山辣韮) 

ヤマラッキョウ 湿地で見たヤマラッキョウ

夏に書いたニラの花に似た、花火のような花だ。
ヤマ…というからには、もちろん山地にも生えるが、やっぱり少し湿り気のある場所が好きみたいだ。

ヤマラッキョウ・・・(山辣韮) ユリ科 ネギ属 Allium thunbergii 花期:9~11月 別名:タマムラサキ

貧栄養の湿地の植物は、往々にして通常よりも花期が遅めのような気がする。
ヤマラッキョウも、10月の湿地ではまだまだ小さなつぼみだったことを考えると、やはり若干遅めに生育するのかもしれない。
もっとも、ここのところの寒気に遭ってはさすがに凍えているだろうか…。

ヤマラッキョウの花 ヤマラッキョウは、ラッキョウとは言うけれど、実際には鱗茎(球根)が小さく香気も弱く、食べるほどのものではないらしいので、もっぱら花をめでるのだろうが、その花は、ニラの花よりも遙かに華やかだ。
ニラが線香花火なら、ヤマラッキョウはもう少し大きい手持ちの花火。
ちなみに、打ち上げ花火はヒガンバナといったところ。

ヤマラッキョウの花 花被片※は、ゆでたまごを思わせるような、ふっくらとした形。
そして雄しべは花被片よりも長く伸び、更に華やかさを添えている。
こうして横から見ると、ユリ科の植物だと言うのはなるほどとも思う。 (※花被片…花冠か萼か区別が付かない植物の、花びら様に見える部分)

タマムラサキという別名を持つヤマラッキョウ
湿地に咲いた、小さなくす玉のようだった。

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2005年11月11日 (金)

ヘビノボラズ(蛇登らず)  …気になる赤い実

hebinoborazu-11 ヘビノボラズは、7月10月、そして今回で3回目のエントリーになる。
気になる赤い実ならば、やっぱりヘビノボラズは外すわけにはいかないだろう…

前回までの写真は、どちらも同じ木であったのだが、うれしいことに、今月の湿地見学では別のヘビノボラズを発見できた。
こちらは、より近づいての撮影が可能なので、希少な植物であるヘビノボラズの赤い実を、是非とも見て頂きたいと思ったのである。

ヘビノボラズ・・・(蛇登らず) メギ科 メギ属、Berberis Sieboldii  落葉低木

このヘビノボラズは木の陰に位置していて、見れば、日の当たるところとそうでないところの差がはっきりと出ているのに気が付いた。
左側の、朝日の当たらない部分が先に紅葉しているのである。

ここのところ、朝夕めっきり寒くなってきた。
あちらこちらで木の葉が美しく染まりだし、庭木も日ごとに色を変えていく。
ヘビノボラズも次第次第に頬を染め、赤い実を鳥たちの腹に収めて、どこか遠くの湿原へ落としてくれよと儚い夢に見る。

さぁ、この週末はどう過ごそうか。
また山にでも行って、秋の深まりを感じてこようか。

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スズメウリ (雀瓜) …愛すべき小さなたまご

スズメウリ あまりきれいな写真ではない。
錆だらけのフェンスにピントが合ってしまったし…。

ここは国指定の湿地内。
つまり、このフェンスは開発の手から守られた領域とのボーダーラインである。

その錆びた古いフェンスに、スズメウリのつるが絡んでいた。
湿地内でも、なぜかここだけにしかスズメウリは見つからない。
それほどレアな植物でも無いと思うから、人目に触れない茂みの奥に隠れているのかもしれないけど、この場所に来たら必ず覗いてみることにしている。
そう、スズメウリに会う為に。

スズメウリ・・・(雀瓜) ウリ科 スズメウリ属 Melothria japonica 花期:8~9月 つる性の一年草 好きなところ:原野や水辺など。

スズメウリの実は、カラスウリと比べてずいぶんと小さい。
なので、「カラスウリより小さいから」、スズメウリ
または、「雀の卵のような実がなるから」、スズメウリ
…こんな二つの説があるが、どちらかというと、nancy的には雀の卵の方がしっくりくる。

10年近く前、我が家のシャッター雨戸のカバー内に、いともしつこく藁を運び込んでいた雀夫婦がいた。
とうとうシャッターが降りなくなる事態に陥って、大工さんがカバーを開けた中にあったのが、こんな卵。
既に親鳥は来ていなかったから、孵ることのない冷たい卵がなんとも哀れでならなかったのを思い出す。

suzumeuri02 さて、スズメウリの実は、直径1~2cm程度。
まるで、ままごとのプリンスメロンのようにも見える。
こんなかわいい緑白色のたまごが「ぷらん」とぶら下がっている光景は、きっと見る者の微笑みを誘うことだろう。

カラスウリは熟すごとに派手なオレンジ色になっていくが、スズメウリの実は緑色から次第に白みを帯びていく。
やがてその実は熟して灰白色となっていき、通常は根もつるも枯れて、その一生を終える。

しかし、中にはつるが垂れ下がって土に潜り、塊根状となって冬を越えるものもあるという。
すべてのスズメウリが越冬するのならば、それは一年草にあらず…なので、いったい、どういうメカニズムで越冬を決定するのだろうか。
「今年は思うようにいい実がならなかったなぁ。」などと、先行き不安を感じてのことであるならば、やはり自然を生き抜く不思議な力というより他は無いのだろう。

そんなことなどおくびにも出さずに、湿地脇のフェンスから顔を覗かせる愛すべきたまご。
静かな秋の風を受けて、かすかに揺れて見せた。

flowertb02

このエントリーは、Flower Blog Ring のTB企画「心に残る花への手紙」に参加しています。

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2005年11月 7日 (月)

ガマの綿毛 …湿地の植物

gama-watage01 今月の湿地見学では、楽しみにしていたことがあった。
それは、ガマのその後である。

ガマについては、2005.07.23 ガマ …湿地の植物、そして、2005.10.14 ガマの穂 …湿地の植物と、過去2回にわたって書いてきた。
今回はいよいよその集大成の姿である。

ガマ・・・(蒲) ガマ科 ガマ属  Typha latifolia 花期:6~8月

ガマは、草丈1.5~2mにもなる多年草で、そのダイナミックさには毎度驚かされるばかりだ。
ガマの穂は、結実すると秋にはぱんぱんの綿毛でいっぱいになる。
しかし、そのはち切れんばかりにふくれていた花穂から、綿毛に伴われた種子が風に乗ってふわふわと離れていくごとに、ガマの花穂はだんだんと痩せ細っていく。
やがて芯が見えるくらいになってくると、今度はなんとなくうら寂しい気持ちにもなってくる。

gama-watage02かつては因幡の白兎を助けたガマが、今度は逆に赤むけにされていくようでなんとなく痛々しい。
秋という季節のセンチメンタルさを倍増させてくれるような風景である。

ただし、ガマにとっては我が子の旅立ちの日なのであり、この日の為に焼け付くような暑さや激しい嵐の日々があったわけなので、綿毛をふわふわとそよがせては、喜びと安堵の入り交じった思いをほとばしらせているのかもしれない。

そう思うと、熟した果実を一つ残らず遠くへ送り出すべく湿地に佇むガマは、やはりどこまでも力強さを感じさせてくれるのである。

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2005年11月 5日 (土)

クロガネモチ(黒鉄黐) …気になる赤い実

久しぶりに娘が風邪をひいた。
鼻風邪だが、口呼吸が高じて気管支喘息になることもあるので要注意である。

秋のイベント続きで疲れが出たのだろうかと思ったが、やはり中学でも風邪ひきだらけ、あちらでもこちらでも、ゴホン、ゴホン!らしい。

なんと言っても、いつもくっついてる母子の弱点は、風邪の共有である。
昨夜からなんだか身体がだる~くなってきて、朝からは更に喉の痛みも感じたので、さすがに今日は泳ぐのもあきらめた。残念!

kuroganemochi

さて、月に一度の国指定湿地の見学会が今日だったのだが、娘の習い事があるので、途中合流、途中抜けという残念な参加となった。
しかし、秋の湿地はまた格別だったので、なんとか参加できてよかったとしみじみ思った。

写真は、いつも見慣れたクロガネモチの木。
澄んだ青空に、赤い実をたわわに付けたクロガネモチの緑の葉がくっきりと映えて、いつになく美しい姿だった。

クロガネモチ・・・(黒鉄黐) モチノキ科 モチノキ属 Ilex rotunda 花期5~6月  果期10月~1月

クロガネモチは常緑高木である。
全国的に見られるが、東北は南部以南ということから、暖かい気候が好きなようだ。

ここで疑問。モチノキ科の、「モチ」とはなんだ?
いつものように、「黐」という漢字にもそそられる。
そこで、いつものようにATOKの同音語用例文で見てみた。

モチ【×黐】  モチノキなどの樹皮をつき砕いて作った粘り気の強い物質。鳥や虫をとるのに使う。鳥もち。  →もちのき

というわけで、すなわち「鳥もち」を作るための木、というわけだ。
鳥もちとは、鳥を捕まえる為のねばねばとした物体である。
今では、「鳥もち」などという言葉は私語に近いのかもしれないし、樹皮から鳥もちを作るなどということは、ほとんど無いのだろうから、木の名前としての「モチ」だけが残っていくのだろう。

かつては鳥を捕まえる為に使われたクロガネモチだが、その「赤い実」は鳥たちが好んで食べる。
そして、種は鳥のお腹におさめられ、空を飛んで遥か遠くまで運ばれるのである。

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2005年10月25日 (火)

アレチヌスビトハギ …外国から来た花

アレチヌスビトハギの実あらやだ、ひっつき虫だわ…
…てな具合に、ズボンなんかにぺたぺたとくっついてくる、そうそう、あれ。

衣服にくっついたときは、三角の実が一つ一つばらばらになっているので、本種を知らない頃は、いったいどんな植物なのかと思っていた。
確かに、実際実がなっている姿は見たことが無い方が多いかもしれない。

その名は、アレチヌスビトハギである。

アレチヌスビトハギ・・・(荒れ地盗人萩) マメ科 ヌスビトハギ属 Desmodium paniculatum 花期:7~9月

アレチヌスビトハギの花 今頃は、ちょうど上の写真のような姿になって、「おいでおいで」と通る者を待っているのだが、夏から秋にかけては、萩と呼ばれるにふさわしい、ピンクの丸い花びら(旗弁)を持った蝶形花を付けていた。

この花、夕方には閉じてしまうのだが、色素的に青みを帯びているらしく、閉じると青くなってしまう。
最初に見たときは夕方だったので、いったいこの青い花は何だろうかと思って、ちょっとわくわくしたものだ。

アレチヌスビトハギの花後 ところが、同時に実を付けた株を見つけて、「なぁ~んだ、ひっつき虫かぁ~」と、がっかりしてしまった次第。

落胆したりして、アレチヌスビトハギには少々申し訳なかったが、そのひっつき虫のイメージとはかけ離れた色合いが心に残った。

憎まれ者の帰化植物、アレチヌスビトハギ
そのはかなさをたたえた色に、なんだか意外な一面を見たような気がしたのである。

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2005年10月23日 (日)

ボントクタデ ~湿地の植物

昨日に引き続き、肌寒い一日だった。

午後からは霧雨が降りしきったし、暑い秋に慣れてしまった身体は、すっかり面食らっている様子。
しかし、午後はいつものように娘と一泳ぎしてきた。
娘は計900m、私は計700mだが、内容が違う。
とても中学生と同じメニューは泳げない。(笑)

bontokutade01さて、タデ科のお花が続く。
昨日のミズヒキもタデ科だし、ギシギシもそうだ。
少し前を辿れば、ハナタデイシミカワママコノシリヌグイオオイヌタデアキノウナギツカミと、気が付けばこれだけのお花の話をしてきた。
う~ん… どうもタデ科のお花には、何かを感じてしまうようである。

と言うわけで、今日はボントクタデ

ボントクタデ・・・タデ科 タデ属 Polygonum pubescens 花期:9~10月

この花は、湿地観察でお世話になる自然観察指導員の方に教えて頂いた。
刺身のつまに使う、ぴりっと辛いヤナギタデによく似ているが、ボントクタデは辛くも何ともなくて、「(辛みが)抜けている」ということから、「間が抜けている」という意味の「ぼんとく」なタデ、ボントクタデと呼ばれるようになったとか。

ぼんとく」という言葉は今まで聞いたことがないが、ぼんとくの語源は「ぽんつく」だと言う。
ぽんつく!…擬音を除けば、POの付く日本語は非常に珍しいと思うのだが、これはますます聞いたことがない。ちなみにこれも「間が抜けた人」の意味。

指導員の方は、昔ボントクタデのことを「ぼんくらタデ」と呼んでいたそうで、なるほど「ぼんくら」なら話はわかる。
…が!「ぼんつくだろうが、ぼんくらだろうが、大きなお世話よ!」という、ボントクタデの声が聞こえてきそうな話である。
ボントクタデにしてみれば、別に好んでヤナギタデに似せているわけではあるまい。

いや、もしかして、ヤナギタデに似ているボントクタデを、見誤って抜かずに残してしまい、より一層ヤナギタデに似たボントクタデが残っていったとしたら…
進化の課程ではよくある話であって、これは人間の方がよほど「ぼんとく」なような…

bontokutade00 ともあれ、「ボントクタデは、タデ科では一二を争う美しい花なのです。」というお話には、大いに納得してしまったのであった。
約3ミリほどの淡紅の花(写真では白に見える)が、ゆるりと垂れた花序にぽつぽつとややまばらに咲いている。
そして花後は、下部が緑、上部が紅色の花被片が、(多くのタデ科の花と同じく)、そう果をしっかりと包み込む。

ボントクタデは、湿ったところが好き。
湿地に限らず、いろいろな場所で見ることができるらしいのだが、我が家の周りでは見かけることはない。

湿地わきで、まるで花かんざしのように揺れるボントクタデ
待ち焦がれていた秋との逢瀬を楽しんでいるかのようだった。

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2005年10月22日 (土)

ミズヒキ (水引)

mizuhiki00 暑い暑いと言っていたら、急に気温が下がってきた。

あわてて布団や毛布を出したりする。食器を洗うときに、ついお湯を出したりすると、ああ、だんだん寒くなっていくんだなぁって思う。

nancyはとにかく夏が好きだから、毎年この季節はなにかもの悲しくなる。
しかし、今年はどこかが違う。
毎夜、こうして花を追っているからかも知れない。

今日の花は、ミズヒキ。水引と書く。
なんともおめでたい名前である。

ミズヒキ・・・(水引) タデ科 タデ属 Polygonum filiforme 花期:8~10月

ミズヒキの花序を上から見ると赤く見え、下から見ると白く見えるというのが、名前の由来だ。
なぜこういうことになるかと言えば4裂した花被片(萼片)のうち、上の3個が赤く、下の1個が白い。

(残念ながら、上の写真の左の方、薄ぼんやりとしか白い花被片は見えないのだが、)花は花序に対して横向きに咲くから、上から見たら赤く、下から見たら白いというわけ。だから、紅白のミズヒキ。
まことにうまいこと名前を付けたものだと、感心して座布団3枚くらいあげたくなる。

mizuhiki01

その花序をよく見ると、開花した花の他に、卵のように閉じた花(つまり、これが花後)の先が、カギ状に曲がっているのが見える。
これは花後の花柱が伸びたもので、このカギを動物たちの毛に引っかけて、花被片に包まれて熟した種子を、新たな大地へと運んで貰うのだ。

そのために、ミズヒキはいつも花序をすんなりと細く長く伸ばして、山野の風にそよそよと身を任せているのである。

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2005年10月20日 (木)

ヘビノボラズの実 ~湿地の植物

hebinoborazu-aki 2005.07.13にご紹介したヘビノボラズの実が、こうしてきれいに色づいた。

ヘビノボラズ・・・(蛇登らず) メギ科 メギ属、Berberis Sieboldii  落葉低木

前に書いたことと少し重複するが、ヘビノボラズは貧栄養の湿地にしか生育しない、絶滅に瀕している日本固有の落葉低木である。

そのけったいな名前は、非常に鋭いトゲを持つために「ヘビでも登れないだろう」ということから付けられたらしいが、今では「ヘビでもめったに登れない」ほど、数が少なくなってしまったヘビノボラズという意味になるだろう。

日本固有の種ということは、全世界で日本だけにしか自生しない種という意味である。
おまけに現在では、宮崎の一部を除いては、伊勢湾周辺の湿地にしか生育していない。
もちろん、この地すらも安住が約束されたわけではない。
日本中、どの湿地も温暖化による影響などから、徐々に水量が減少しつつあるのだ。
つまり、ヘビノボラズはいつ姿を消してしまうとも限らない運命なのである。

「湿地は人間に必要ない」と考える人たちは多い。
…しかし、そう結論づけるのは、あまりにも尚早である。
仮にヘビノボラズの生育環境が破壊されるとしてみよう。つまり、小さく見積もって伊勢湾周辺の湿地が干ばつ化してしまうとしたら…、その影響は、単にヘビノボラズが絶滅するだけではとどまらないのだ。

もっと範囲を広げて、もしも世界中の泥炭湿地が干上がってしまったら、いったい私たちはどうなるか… 泥炭湿地=炭素の固まりである。それが水気を失ったら、大量な温室効果ガスが放出されて、あっという間に地球温暖化はピークを迎え、後には滅亡という怖ろしい2文字が待っているのである。

シベリアの永久凍土の急速な溶解を契機として、現在、泥炭湿地の保全活動は、世界的な優先事項になりつつある。これは日本も決して例外ではない。
一口に「植物が絶滅する」と言うが、もはやこれは単なる感傷論ではすまされないことであって、もっともっとシビアに考えていかなければいけない切実な問題なのだ。

ヘビノボラズは、決して自らの手で身を滅ぼすことのないようにと、その身をもって私たちに教えてくれているのである。

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