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2006年6月20日 (火)

アカバナユウゲショウ (赤花夕化粧)

アカバナユウゲショウ 傍らに咲くマーガレットの花よりも、もっと遠くへ…
ぐっと手を伸ばそうとしているアカバナユウゲショウの花。

アカバナユウゲショウ・・・(赤花夕化粧) アカバナ科 マツヨイグサ属 Oenothera rosea 花期:5~9月 南アメリカ原産の多年草

アカバナユウゲショウとは、5月のある日、夕刻の散歩で見かけたのが初めての出会いだった。
…と言って、花が咲いていたのかと思いきや、その時見たのは濃い紅色に小さくしぼんだ花ばかりだった。
その時は、「好日性の花かなぁ?」といぶかしく思いながら、近いうちに会えることを願ってその場を離れたが、後日、道端に咲くピンクの花を発見したとき、なぜかあの時のしおれた花が目に浮かんだ。
「ああ、あの時の…」

アカバナユウゲショウの花アカバナユウゲショウは一日花なので、その日咲いた花は閉じてしまう。
しかし夕化粧と言うくらいなので、夕方閉じるには早すぎる。
nancyが初めて見たのは、おそらく前日に咲いた花だったのだろう。

それにしても、この赤花夕化粧という名!
なんともあだっぽい、しっとりとした響きである。
夕暮れ過ぎ、粋な姐さんが鏡台(決してドレッサーではない)の前に佇み、すっと紅を差す。…思わずそんな光景が目に浮かぶ。
ただし、これらの写真は午後3時頃、それも明るい陽の下で撮ったもの。ということは、アカバナユウゲショウは夕方に咲き始めるということではないようだ。

アカバナユウゲショウは南アメリカ原産で、日本には明治の頃から栽培され始めたという。
つまりはお庭で大事に育てられていたお姫様が、ある日自由を求めて外に飛び出し、厳しい自然に順応して生き抜いてきたというわけである。
そう思うと、その柔らかな花色の影にたくましさが見え隠れする。

アカバナユウゲショウの花 アカバナユウゲショウの花は直径約1cm。
茎の上部の葉腋にピンク色の花を咲かせる。
花弁は4枚で丸く、紅色の脈が目立つ。
そして何より目に入るのが、柱頭と呼ばれる雌しべの頂部である。
アカバナユウゲショウの柱頭は花の大きさに比べて不釣り合いなほど大きく、先は4裂して十字に平開している。
タニウツギもそうだったが、雌しべが特徴的に発達している植物には、繁殖力のたくましいものが多いような気がする。

人の手から離れて自然の中で暮らしていくと言うことは、並大抵の苦労ではなかっただろう。
なにせ、いつなんどき草取りに遭って抜かれてしまうかもしれないのだ。
そのため、アカバナユウゲショウは頻繁に一日花を咲かせ、速やかに受精して種子を作ることをひたすら繰り返しているのである。

アカバナユウゲショウの花

ところで、アカバナユウゲショウさく果の形は極めておもしろい。
右の写真、花の下の方に若いさく果が見えるが、上部が太く膨らみ、縦に8本の筋(実は稜)が入って、なんだか気球のような形をしているのだ。
マツヨイグサ属の花の基部には萼筒(がくとう)があり、更に萼筒の基部には子房があるのだが、大抵のマツヨイグサ属のさく果は細長い円柱形なのに比べ、バルーン型とは実にユーモラスな形状である。

このバルーン型にも理由があり、一つのさく果の中には多くの胚珠が入っていて、熟した暁にはぱっくりと4つに裂けて、中心に置かれたたくさんの種子が姿を現すことになる。(独立中央胎座と言う)
さく果…(蒴果) ホウセンカのように乾燥して種子をまき散らすような果実
萼筒…(がくとう) 萼片が癒合し、筒形または皿型になったもの
胚珠…(はいしゅ) 種子植物の種子になる部分

ところで、もしも「繁殖」の目的以外にアカバナユウゲショウが休み無く一日花を付ける理由があるならば、それは防御のためではないだろうか?
こんな儚げな花が咲いていれば、あの悪夢のような草刈りから除けられる可能性が高いのである。
スミレしかり、タカサゴユリもしかりである。
彼らにとって最大の協力者は人間なのだ。
アカバナユウゲショウの一番の武器は、なんと言ってもこの可愛らしいピンク色の花。
蒸し暑い時期にこの花を見て、憎く思う人はいないだろう。
攻撃こそ最大の防御なり…と言うわけで、重たい梅雨空のもと、人々の心を味方に付けたお姫様は、今日も可憐に咲いているのである。

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