キンラン(金蘭)のつぼみ
5月のある日、山の小道の出口近くで、気になるつぼみを見つけた。
それはたった一株だけ、しかし周りの草花とはまったく違う雰囲気で佇んでいた。
見れば、黄色いつぼみが3つ。どんな花が咲くのだろう…
大変興味が沸いたが、辺りを見回しても他には同じ花は見当たらず、後ろ髪を引かれる思いで後にした。
早速家に帰って図鑑で調べると、どうやらキンランらしいことがわかったのである。
キンラン・・・(金蘭) ラン科 キンラン属 Cephalanthera falcata 落葉樹林内に生える多年草
それから10日ほど経って、あのつぼみがどうなったか見に行ってみた。もっと早く行きたかったのだが、天気と用事とがうまく折り合いが付かなかったのだ。
山の風景はがらりと変わっていた。
両脇から草が生い茂ってきて道幅が狭くなっている。
あのつぼみ… どの辺だったろうか… 探せどなかなか見つからない。
キンランはサギソウと同じく盗掘に遭いやすい花だ。
可憐に咲く姿を見て「持ち帰りたい」と思う気持ちはわからないでもないが、家で植えてもキンランは育たない。
山の花は、山に在ってこそ美しいのである。
キンラン
雑木林の木漏れ日に照らされて輝くさまは金蘭の名に相応しい。元々、日本ではありふれた和ランの一種であったが、1990年代ころから急激に数を減らし、1997年の環境庁レッドリストに「絶滅の危険が増大している種」(絶滅危惧II類(VU))として掲載された。(中略)人工栽培はきわめて難しく、また地下部がよく発達することから、菌根菌(ラン菌)への依存度が高い、腐生植物的側面があるのではないかとも言われている。
出典元: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 【キンラン】
寂しい気持ちで茂みを覗きながら歩いていると、あった、あった!キンラン!無事だったのか…!間違いなく同じ株である。
花は既に終わっていたが、この再会は本当にうれしかった。
滅多に人と会わない小道だからこそ、ひっそりと咲くことができたキンラン。
そして無事にその花を咲き終えることができたこと。それを知り得たことが、うれしかった。
来年は開花に出会えたらいいな…。
そう思いながら歩みを進めると、更にうれしい出会いが待っていたのである。
| 固定リンク
コメント