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2006年4月30日 (日)

ムラサキケマン(紫華鬘) その3

ムラサキケマンのそう果 さて、様々な工夫を凝らしたムラサキケマンであるが、無事に結実すると、花弁を落として細長いそう果を下向きに実らせる。
やがて中の種子が黒く熟すころ、皮が巻き上がって勢いよく種子を弾き飛ばすのである。

ところで、娘の通う中学校の端っこに咲くこのムラサキケマンが湿地の森からやってきたのは、おそらく間違いないところだろう。
しかし、この中学校の敷地は斜面に盛り土をして造成されたらしく、国指定湿地とは相当な高低差があるばかりでなく、そこはまっすぐにすとんと落ちた絶壁なのだ。
はじけ飛んだ種が上から下へ飛ぶというのならわかるが、いくらなんでも低い湿地から高い中学校へ種を飛ばすのは不可能だ。
また、それなら周辺地域にまんべんなくムラサキケマンが咲いてもおかしくないだろう。

ムラサキケマンのそう果 これを解く鍵は、キケマン属の種が持つ秘密にある。
コスミレでも書いたが、キケマン属の種子もまた、アリの大好物であるエライオソーム(種枕)という物質が付着しており、アリによって種子をより遠くへ、より違う環境へと運んで貰うことを狙っているのである。

おそらくこのムラサキケマンも、アリによって運ばれてここに根を下ろしたのではあるまいか?
もちろんアリが進める距離には限度があるから、決して一気にではなく、コンクリートのひび割れを辿り、幾代も掛けてこの地までやってきたのではないだろうか。
あくまで推測に過ぎないが、さぞかし苦労してたどり着いたのではないだろうか。

一つの種が一つの場所で繁栄するということは、単に数を増やすだけなら好都合だが、まかり間違ってその場所が何かの災害に見舞われてしまったとき、あっけなく絶滅してしまう危険をはらんでいる。
そのため、ムラサキケマンやコスミレはアリの力まで借りてまで、異なる環境へと己が遺伝子を送り込むのだ。

その先にはどんな苦労が待っているのかわからない。
“かわいい子には旅をさせよ”ではないが、そうまでしてでも守らなければならない使命とは、すなわち「種の保存」に他ならないのである。

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